重松清『流星ワゴン』感想/やり直しの効かないやり直しの話

★★★★☆

文句なしに面白かったけど、自分の好きな分野でない、刺激が少ないというめちゃくちゃ理不尽な理由で星がひとつ減っている。

ただ、気持ち的には満点だった。

死を受けいれた四十路手前の男が主人公。希死念慮の理由は家族間のトラブル。自分はリストラされ、妻は性的な依存症状態、息子は不登校と、魔の3点セット。そんな折にワゴン車が現れ、乗車するなり過去をやり直していくというここまでは割とありがち。『君の名は』が記憶に新しいけど要はそれと同じようなゲーム。

ただ、そのゲーム性を面白くするのは『やり直しの世界で行ったやり直し行為は現在の現実世界に反映されない』という制限。

つまり、未来を知る状態で過去に戻り、いくら足掻こうとも、現実は変わらない。変えられない。

このワゴン車の目的は、過ちのあった過去をやり直すことではなく、どの分岐点でどういう過ちが起こっていたかという過去の失敗を思い知らされるという1点のみ。こんな悲しいことはない。

けれど、なぜか面白い。清々しい。

この小説のテーマとして『親子』がある。

僕の周りにはまだ結婚した友人が一人いるだけで、子供を授かった人はいない。当然僕にもまだ子供はいないし、その予定もない……というか、育てられないと思っている。僕の手に負えないし、僕の血を受け継ぐなら尚更そうだと想像してしまう。

だから、この小説の中でたびたび首を傾げてしまうような、理解できないところもある。

これはきっと僕が親にならないと分からないような心情なんだろう。親子のことは誰かの子供であるか誰かの親になるかでないと分からないことが多い。多分、理屈じゃ説明がつかないんだろう。

最近、と言ってももう数ヶ月前のことだったと記憶してるけど、ネットゲームに没頭してにっちもさっちもいかない息子を父親が自分の手で殺めたというニュースを見た。

このニュースを受けて、子を持つ僕の知人はゾッとしていた。とても心を痛めていた。ニュースは大体的に報じられていたし、僕もなんとなく貧相な想像力を働かせたけど、多分彼の気持ちとは比べ物にならないだろう。

やっぱり、同じ立場に立たない限りは分からないんだと思う。

あなたがもし、誰かの息子ないし娘で、さらに、誰かの父親ないし母親なら、きっと本作を読み耽る間は至福の時になるのでは。

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