作ってます!

綾辻行人の小説はズルい。準ファンタジーというか。anotherの感想。

高校生の頃、ミステリだとかスプラッターだとかにどハマりしていて、映画、漫画、小説はもちろん、web上に落っこってるものまで広く手を伸ばしていた。
そんな時に、たまたま綾辻行人の『殺人鬼』という小説を本屋で見かける。それが著者に初めて触れた機会だったのだけれども、これがまぁなんというか納得のいかないオチだった。

オチに納得がいかないと言うと語弊を生むかもしれないから補足する。
僕は基本的にハッピーエンドよりもバッドエンドの方が好きだ。
作品を味わった後、全てが綺麗に丸く納まった終わり方に気分よく眠るよりも、終わり方の後味の悪さにモヤモヤとした気分のまま眠りにつく方が好きだ。
そんなわけで、『彼がああなるなんて!』『こんな良い登場人物になんて災難が!』みたいな意味でオチに納得がいかないのではなく、一応ミステリの体裁をなしていたのにそりゃいくらなんでもファンタジージャンルだろう、みたいな終わり方に時間を損した気分にまでなった。
なんというか、ズルいの一言に尽きると思う。確かに100%現実に起こりえないことではないからファンタジーではないし、そういうオチなら筋も通るには通るのだが、いくらなんでも……と言った具合だ。
例えば、鈴木、佐藤、高橋という三者の登場人物がいて、彼らを中心になにか怪奇や殺人が起きたとしよう。その殺人の様に恐怖する(楽しむ)のが純粋なスプラッターで、誰が殺人鬼か推理したり、どうして殺人に至ったのか考えたりなどwhyやwhoを楽しむのが純粋なミステリーだと僕は考えている。
もちろんどちらの要素も兼ね備える作品もあるだろうし、別に無理やりカテゴライズがしたい訳でもあるまいし、それはそれでいい。それに見あった楽しみ方を僕は見出し、勝手に楽しむだろう。
ただ、これで最後に『実は鈴木でも佐藤でも高橋でもなく田中が犯人でしたー』なんてオチがついてミステリーを装られた日にゃ僕はフリーズしてしまう。
『殺人鬼』についてはちょうどそんな心象だった。(考えればもう10年弱も前のことだし記憶がかなりおぼろげだから、読み直してみたら案外そうでもないのかもしれないけれども)
そんな訳でなんとなく著者の作品を敬遠していた。時間と小説を読む労力を無駄にしたくなかったから。フリーズしたくなかったから。
ただ、最近ひょんなことからその綾辻行人の『another』という作品を読んでみた。

当記事はそのことについて触れていくのだけれどもそこまでオススメではないので、ややネタバレありで進めていく。(面白かったけど好みではありませんでした!)

その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。

結論から言うと、綾辻行人への評価(っていうとかなり偉そうだけど、それ以上にぴったりの言葉が見つからない)自体は覆らず、やっぱりどこか腑に落ちないというか、ファンタジーのような物語であった。

もちろん、モヤッとする部分が多少あったとしても、それ以上に語りたい部分があれば、多少のモヤッは我慢できるのだが……。
というのも、この物語は『呪い』『超自然』要素がある。ストーリー大筋自体はクラスの生徒達がランダムに死んでいくというよくあるものだ。
そして僕が勝手に勘違いしていたのだが、この『呪い』の仕組みはおざなりでもいいから解決してくれると思い込んでいた。
まぁ、この物語の重きは『呪い』の仕組みではないし、別に解決するところに文字数や構成を練る必要もないとは思うから、完全に僕のワガママというか。
好きでも嫌いでもないバナナという食後のおやつを妹に勝手に食べられていて、食後に冷蔵庫を開けてみたら入ってなかった程度のやるせなさではあるから、別にいいんだけれども。少しだけ『えっ?ないの?』という気分にはなった。
ただ、もちろん色々と好印象を持たされる箇所や好きな価値観というのもあったのでそれらを紹介していく。
まず、上巻の方で。

怪談っていうよりはミステリみたいですね。ひょっとしたら、ちゃんとした答えがあるのかも

まさしく僕が言った不平を論破されたみたいなところだけれども、確かにとも思った。
答えのないものが怪談で、答えのあるものがミステリ。それは間違いない。
ただ、それらの要素どちらも持ち合わせている作品をそうとは知らされずに出されると少し困りはする。『怪談ミステリ』とでも言えばいいのか。部分によっては答えを出されて、部分によっては答えを出されない作品。
最初からそういうジャンルとして確立されており、それを頭の片隅に入れた上で読んでいれば僕はこういう面倒なことを言い出さなかったかもしれない。
本作でいえば呪いの部分は怪談、ストーリー部分はミステリ、と言った具合だ。そして、『怪談部分にも答えを出せ』と文句を垂らしているモンスターカスタマーが僕だ、ぐぬぬ。
そんな訳で、この一文にはすごい納得したし、まさしく『another』は『怪談ミステリ』なのだろう。
でも、なんだろう。もう最初っからそういうものです、仕組みとか触れませんよっていう確固たる姿勢を見せてくれていたら僕だってこんなには噛みつきはしなかった。
例えば『リアル鬼ごっこ』『王様ゲーム』とか携帯小説みたいに『こういう世界観で行きますよー、こういう世界観は前提ですー』って清々しくやってくれてたら良かったんだけど、物語の目的だとかゴール設定が明確化されていない状態で、『なんとなく怪談を解き明かしてみるかぁ』スタンスでいられるとこっちも少しは勘違いしちゃうというか!解き明かされるのかなってちょっとは期待しちゃう。
というモヤモヤはありつつも、冗長になってきたのでこれ以上は割愛。なんにせよ、件の一文は良かった。
答えのないものがホラー。答えのあるものがミステリ。綾辻行人はホラーミステリーね、はい。

次。下巻の方。
これは引用はしないで口頭で説明していく。
ヒロインの女の子は義眼で、この義眼になってから他人のオーラが見えるんだとか。
死者のオーラは変な色がついて見えて、正者のオーラと異なっていることがわかるという。そして、この『another』という作品はクラスに紛れ込んでいる死者をヒロインが疼く左目で見つけ出すというストーリーになっている。
ちょっと皮肉っているが、あくまでこの左目を僕は好きな要素として挙げている。それは少年漫画に頭が毒されていて、特殊能力に目がないからとかそういうわけではない。いや、ある種そういうわけでないとは言いきれない。

ここからは少し話が逸れるが、サヴァン症候群というものをご存知だろうか。

サヴァン症候群など(サヴァンしょうこうぐん、英語: savant syndrome)とは、知的障害発達障害等のある者の内、ごく特定分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4

簡単に言えば、現実的な特殊能力だ。
それは桁外れの暗算能力であったり、語学能力であったり、多岐にわたる。
広義で言えば、絶対音感なんかもサヴァン症候群のひとつとされている、と言えばそこまで不可思議、非現実的なものではないと思う。
そんなサヴァン症候群の中に『共感覚』も含まれる。
共感覚とは、文字通り知覚におけるバグだ。例えば形に味を感じたり、音や数字に色を見出すというケースも挙げられていたりする。
本来の人の感覚とは異なる感覚を得られる人がいる、と考えるといいかもしれない。
本当かどうか知らないが有名な逸話だと、宇多田ヒカルも共感覚の持ち主で、彼女の『COLORS』は音階と色を合わせて作られたなんてのを聞いたことがある。
それでは本題。宇多田ヒカルは音に色を見出すようだが、僕の周りに一人だけ霊感のある女性がいて、彼女は霊的なものを感じた時に『色』を感じるのだと言っていた。
霊の存在を肯定するかどうかは別として、彼女の旦那さんは少なくとも半信半疑のやや『信』寄りではあった。『信』に寄せた要因となるエピソードを聞いたことがある。
旦那さんの方は理系な頭の持ち主で、霊や霊感のある彼女を娯楽程度に考えていたのだろう、何も告げずに彼女を心霊スポットへ連れていったことがあった。
すると、その場所を知らないはずの彼女はガタガタ震えだし、体調不良を訴える始末。それも一度や二度ではなかったそう。(話を聞いている時は酷なことされてる彼女に同情もしたが。)
その後、他意なしに二人で出掛けた時、同様に彼女が震えることがあり、調べてみるとそこには過去に人命に関わる事故があったり、心霊スポットとして名を馳せる場所であったり……といったことが何度かあったそう。
彼女いわく、ホラー番組や映画、心霊写真などで見られるような形態の霊が見られるのではなく、あくまでオーラや色として認識しているそうだ。
あくまで、人型ではなく、色、らしい。
そして、その色を感じた時には寒気や不快感もセットなんだとか。
この話を聞いてから、僕は『霊感』的なものと『共感覚』とを紐づけて考えるようになっていた。
知覚は本人にしか出来ないから、他者では真偽は分からないものの、霊感も共感覚のひとつだと考えると案外非現実的すぎないのかもしれないな、と。相変わらず霊についてはあまり信じていないが、そういう知覚ができる人もいてもおかしくはないのかな、とは思っている。その方がロマンもあるし。

そんなこんなで、『another』のヒロインの持つ知覚の説明部分は、僕の知る霊感を持つ彼女の言質と一致する部分があまりに多すぎた。
綾辻行人が僕の聞いたような話を聞いたことがあったり、霊(死者)に色を見出す人が周りにいたかは定かではないのだが、少なくとも僕の知る現実に存在する人と件のヒロインの証言が一致する以上、非現実らしさが薄れたというか。
と、まぁ書きたいことが書けたので、終わりにしようと思ったけれど、先に述べたように綾辻行人が霊に色を見出す人の存在を知るかどうか確かめたく、後書きをたった今読んでみた。
結論としては触れられておらず、『六番目の小夜子』という中学時代に読んだ小説が要素として本作に入っていることを知り、少し懐かしい気持ちに。
もう10年近く前だし、僕は記憶力が悪いから内容に関して全く覚えていないけれど、好きだったというのは覚えている。
そんな感傷に浸りながらなんとはなしに解説の方も読み進めていると、『十角館の殺人』というこれまた懐かしいタイトルを目にする。と、同時に僕は『殺人鬼』より前に綾辻行人作品を知っていたことを知る。どんだけ杜撰な記憶なんだ。
『十角館の殺人』についてもたしか中学の頃に読んでいたはずだが、六番目の小夜子同様、いや、それ以上に何も思い出せない。そりゃもう記憶をまさぐっても箸にも棒にもかからない。
綾辻行人の楽しみ方がある程度分かったし、再読してみようかなぁ、なんて。今度は最初から怪談ミステリだと思って。
記憶力が悪いのは以前見た作品を初めて見る感覚で見れるという点ではすごくありがたいことと知る今日この頃。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。