岡嶋二人『クラインの壺』感想/VR、水槽の脳、インセプション的な話

★★★★★

たまらなかった。最初から最後まですごく良かった。

話の筋としては、VRだとか、水槽の脳だとか、インセプションだとか、そういう系統。あとは、マトリックスとかもそうなのか。ゲームの世界にいると認知出来ていたうちが華で、そのうち主人公自身もどちらにいるか分からなくなる系の世界観。

本で読んだことを少し後悔もした。僕は基本Kindleで読む方が好きなんだけれども、安く読むことに焦点を当てると、図書館へ行ったりブックオフへ行くのがベストプラクティスだったりする。

だから、読んでみてよかった本はKindleで買い直すこともある。『哲学的な何か、あと科学とか』に関しては知人に布教してしまったこともあったし、中古から新書からKindleまで買い揃えてたから多分合計で5冊くらい買ったんじゃないかと思う。

Kindleの何がいいかって、映画と同じであとどれ位で終わるのかが読めないことだ。残りのストーリー量が読めないから現在の展開からどう転がるのかまるで予想がつかない。もしかすると、終わりがけになってから今までにはなかった新要素が入ってくるかもしれないし、そうなれば終わり方に対する予想の立ちようがない。一方で、紙の本で読んでいると、例えば、残りの分量が多ければもう一悶着ありそうだな、とか。逆に残りが少なければこのまま悪い状況で終わるのか、とか、ある程度の予想が立ってしまう。

この小説はすごく良かったけど、残りの分量が読めなければもっと楽しめたなと思うと少し損した気持ちになってしまう。

自分の選択ミスに対する愚痴はこの辺で仕舞いにして、この小説の何がすごいって、初出が’89年だということ。

本文にも『家庭用パソコンには1MBのメモリが組み込まれていて(略)』みたいな表記があったから「んん?」とは思ったけど、まさか30年も前に本作が作られたというのは驚きを隠せない。

解説でも掘り下げてくれているけど、89年というのは、パソコンがマイコンと呼ばれ、ドラクエはIIIの時代。

その時代に、仮想現実を視覚だけでなく全身で知覚できるゲームを詳細に描き、さらにそれを面白いストーリーへと料理している手腕は圧巻。

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